ZUAN&ZOKEI by Makoto Kagoshima

vol.5 絣 Q1 久留米絣をつくったきっかけは?

Q1 久留米絣をつくったきっかけは?

ZUAN & ZOKEIのプロダクトの成り立ちや誕生秘話を、鹿児島睦とともにたどる Talk with Makoto Kagoshima。Vol.5は、絣(久留米絣)です。

biotope(以下・b):京都の「かみ添」さんと唐紙をつくったのがきっかけで、鹿児島さんの図案を日本の伝統工芸で表現するコラボレーションを続けたいと思いました。

鹿児島(以下・鹿):久留米絣は、福岡県の筑後地方の伝統工芸です。

b:絣は、織りの構造が立体的で、2次元のテキスタイルデザインではなく、3次元的な思考が必要な織物なので、誰もができる仕事ではないと思っていました。陶芸家・鹿児島睦が絣のデザインを手がけることはないかもしれないけれど、鹿児島さんは、とても発想が豊かな方なので、図案家として絣の柄をつくれるのではないかと。

鹿:そうだったんですね。

b:はい。図案家・鹿児島睦が手がける図案の可能性を、探ってみたい気持ちがありました。

鹿:それで、織元さんに声をかけてくださったんですね?

b:久留米絣の織元、下川織物さんと知り合ったこともあり、コラボレーションをお願いしました。久留米絣は、200年以上の歴史を持つ九州を代表する伝統の織物です。下川織物は、伝統の技法を守り応用しながら、新しい視点でものづくりをしている織元なんです。

鹿:僕は、下川さんとの打ち合わせに合わせて、ある程度、図案のイメージを膨らませていたんですが、実際の製法を見せていただくと、絣という織物が、とても特徴的なつくり方で生まれているということを実感しました。

b:そうですね。私たちも、その作業工程にびっくりしました。糸の染色の仕方も、織り方も、とてもロジカルというか、数学的な考え方でつくられているんです。改めて素晴らしい工芸品だなあと思いましたね。

絣の糸がたくさん干してある写真

鹿:そうなんです。絣は、縦糸と横糸で織り上げていく織物ですが、柄を出すためには、その柄の入り方に合わせて、糸を染めるところから始めなければならないんです。その染め方にも特徴がありましたね。

b:縦糸、横糸、それぞれ柄を出すために、糸を巻きつけてくくり、染めていくことで、染め分けていくんです。この技法を、括り(くくり)というんでしたよね?

鹿:そうですね。織り進めたときに図案がどうでるかを想像して、色を染め分けていくというのは、すごい技術ですよね。

b:しかも、糸を染める作業は、すべて手作業です。天日干しをするため、天気がよい日を見計らって作業するなど、気を遣うお仕事です。

鹿:織りの工程は、いまでこそ機械が担っていますが、織り進めるうちに糸がずれることもあるので、織り機のそばにはいつもかならず熟練の職人さんがいて、仕上がりに常に気を配っているんです。

b:最後に頼りになるのは、やはり、人の手なんですね。

鹿:200年もの間、人の手で培われた伝統の技術がいまも受け継がれているというのは、とても貴重なことだと思いますね。

糸を織っているシーンの写真

b:それと、絣はテキスタイルですが、図案を表現するには、平面のグラフィックデザインとして考えていては、ダメなんです。

鹿:そう。織りの構造と糸の染め分け配置を理解しないと柄をつくり出せない。

b:そういう意味で、ロジカルな思考が必要な工芸品だなと思いました。鹿児島さんは、最初から、ロジカルにイメージすることができていたような気がするんですが、どうですか?

鹿:そうですね。そのことは、わりと早い段階で、理解できていました。絣の製法に照らし合わせて図案を考えるのは、けっこう頭を使いましたが、とても楽しかったですね。

b:どんなところに、一番、頭を使いましたか?

鹿:例えば、絣糸は、基本的に2色に染めます。その2色の縦糸と横糸を組み合わせることでグレートーンの3色目がうまれます。さらに、糸に染め分けた黒と白によって生まれた縞模様は、もうひとつのグレーに見立てることができます。こうしていくと、黒と白の2色染めでも、その倍の4色の色を表現することができるというわけです。

b:私たちは、最初は、なかなかロジカルに考えることができませんでした……笑。数学的な思考で考えるのには、けっこう時間がかかりました。

鹿:できあがる反物は平面だけれども、織りの構造は3次元のパズルのようですからね。

次回は、どうしてこの図案になったのかを聞かせてください。

話している鹿児島さんの写真

Talk with Makoto Kagoshima vol.5 絣

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