ZUAN&ZOKEI by Makoto Kagoshima

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Q3 あずま袋とクッションを作ったのは、なぜ?

 

ZUAN & ZOKEIのプロダクトの成り立ちや誕生秘話を、鹿児島睦とともにたどる Talk with Makoto Kagoshima。Vol.5は、絣(久留米絣)です。

biotope(以下・b):鹿児島さんと下川織物がコラボレートした久留米絣は、とてもいい仕上がりになりました。

鹿児島(以下・鹿):縦糸を染め分けることで、色がバシッと入るという、久留米絣特有の表現を、花の図案の中心のドットの部分で表現できたことが、よかったです。糸の染め分けにより絵柄を織っておくという部分は、僕が、久留米絣でいちばん格好いいと思ったポイントでしたので。

b:絣にはあまり用いないという大柄を、鹿児島さんにリクエストしてみて、よかったと思っています。

鹿:もともとの図案は、犬のシルエットがはっきりしていましたが、織物になったことで、柔らかい感じになりました。こうして織りあがった絣の反物を用いて、biotopeであずま袋とクッションカバーを製作してくれましたね。

あずま袋を下げている写真クッションの写真

b:あずま袋は、布を三つ折りにして正方形の状態に重ね、両端を縫うだけでできあがる構造の袋です。今回は、生地幅の約37センチを正方形の一辺として、反物約108cmを折り重ねて作りました。

鹿:久留米絣の生地幅の制約を生かして無駄のないプロダクトということですね。

b:久留米絣は、着物や浴衣によく使われる織物なので、反物の幅が37cmと決まっています。

鹿:プロダクトにするときには、その生地幅を活かすことができました。

b:はい。あずま袋は、まさに、37cm巾の布から生まれるプロダクトです。

絣の風合いや図案がどう疲れているかがわかるアップ写真

鹿:クッションカバーも、そういう発想で生まれたんですよね。

b:久留米絣という伝統工芸を、現代の服装や暮らしに取り入れるというときに、反物の幅など、織物としての成り立ちを意識して考えていきました。

鹿:2014年の図案展の期間には、あずま袋やクッションカバーの他に、ショルダーバッグや、大人用と子供用のモンペも販売しましたね。

b:そうですね。どれも好評でした。布ものの製作は、福岡で「布と手芸のモノ キナリ」を営む小園由華さんと八女の「うなぎの寝床」さんにお願いしました。

鹿:僕は、和装をすることもあるので、いつか、この絣で浴衣を作れたらいいなと思っていますよ。

b:今回のコラボレーションで生まれた久留米絣の反物は、遠目で見たときには、鹿児島さんの図案として成立している一方で、近くで見ると、計算のもとに構築された絣の構造がよく分かる地模様になっています。

鹿児島さんの図案の浴衣というのは、とてもいいですね。

次回のインタビューは、LINNUT(壁の鳥)についてです。お楽しみに。

鹿児島さんがあずま袋を広げている写真

Q2 どうしてこの図案になったの?

 

ZUAN & ZOKEIのプロダクトの成り立ちや誕生秘話を、鹿児島睦とともにたどる Talk with Makoto Kagoshima。Vol.5は、絣(久留米絣)です。

biotope(以下・b):絣の伝統的な柄といえば、小花柄や幾何学模様です。でも、鹿児島さんとコラボレートするなら、ひと目でそれとわかる図案のほうがいいと感じて、大きい柄であることとに加え、動物柄をお願いしました。

鹿児島(以下・鹿):最初のイメージでは、ワニの図案を想定していました。久留米絣は反物なので、横幅が約37cmと決まっています。その生地幅をいっぱいに使って、両側にワニがいる図案を描きました。

b:その図案をもって、織元の下川織物を訪ねましたね。

鹿:そうでした。僕としては、ワニの図案で気持ちがほぼ固まっていたんですが、打ち合わせで、衝撃的なことがあってね。考え方ががらりと変わった、というか。びっくりしました。

b:糸を染める段階から、絵柄が決まっていくという前回のお話ですよね。

鹿:そうなんです。でも、何が衝撃的だったかといえば、そのときにみせていただいた生地サンプルです。その生地の模様がすごくよかった。何がよいって、色の入り方がものすごく格好よかったんです。

スマホの画面にワニの図案が表示されている写真

b:縦糸と横糸、それぞれの柄の入るところを染めてから、織りはじめるということの意味が、よく分かるサンプルでしたね。

鹿:久留米絣は、最初に縦糸を染める。ということは……。

b:つまり、縦方向のどこに色が入るかは、縦糸の染めの段階で決まってしまうということですよね。

鹿:そうなんです。その縦糸に横糸を通して織ることで、少しづつ柄をだしていくんですが、面白いのは、織り進めるうちに横糸はどうしてもズレるけれど、縦糸は、決してずれないということ。つまり、縦糸にあらかじめ染められた柄は、バシッと決まっていて決してずれないわけです。

b:その縦糸の入り方に、鹿児島さんは、すごく心を動かされていましたね。

鹿:はい。縦糸がバシっと入ることで絵柄がキリッと決まるかんじが、とても格好よく見えました。自分の図案を使っていただく絣でも、それをやっていただきたいと思ってしまったんです。

b:これでお願いしたいです、というかんじでしたね。

鹿:下川織物さんに「縦糸が格好よくでる図案を、もう一度考えます!」とお伝えして、その日は一度帰りました。

b:後日、鹿児島さんから、久留米絣のために考えた新しい図案をいただきました。

図案の原稿用紙の写真

鹿:縦糸の色を生かす意味で、大きめの花のモチーフを両端にいれました。その下に犬を描きました。花の中にドットが並んでいる部分を見ると、一本一本の縦糸が、白と黒に染め分けられていることがわかると思います。

b:インパクトのある図案だと思いました。図案は、実際は、何に描いたんですか?

鹿:久留米絣は、織り幅いっぱいの絵柄を何度もリピートして織り進めるわけですが、その最小単位の大きさ(横糸154本)の原稿用紙が織元にあって、糸の染め分け方を想像しながら絵を描けるようになっているんです。そこに、僕は手描きで図案を描きました。

b:面白いですね。その原画を元に図案師さんが専用の図案用紙に図面を起こして、染め分けの設計図をつくり、括りの職人さんが、その設計図にそって糸を染めていきます。

鹿:縦糸、横糸それぞれの、色を染めるところと染めないところを把握しながら、職人さんが染めていきます。

b:鹿児島さんが描いた原稿用紙を見て、下川織物さんは、どう感じたのでしょう。

鹿:まず、織りの構造として、犬の目は、黒では表現できないことが発覚しました。

b:それで犬の目は、グレーなんですね。

鹿:はい。結局、目の色は、縦糸と横糸が交わる部分としてグレーになりました。

b:今回の久留米絣は先染めで、1回の生産分36反(1反=12メートル)を一気に染めます。一度、織り始めたらやめることも、途中で柄を変えることもできません。

鹿:久留米絣の魅力は、縦糸と横糸が交わることにより、優しい雰囲気の柄に仕上がるところです。織物の場所によってぼんやりとしていたりすることもあるけれど、それが、いい味になっています。

b:それも、久留米絣ならではですね。

鹿:職人さんを信頼して任せてこそ、自分ではできないものができあがる。第三者の方とコラボレートしてものづくりさせていただく面白さのひとつだと思っています。

次回は、あずま袋とクッションのプロダクトの話を聞かせてください。

織り機の中で図案が徐々に形になっていっている写真

Q1 久留米絣をつくったきっかけは?

 

ZUAN & ZOKEIのプロダクトの成り立ちや誕生秘話を、鹿児島睦とともにたどる Talk with Makoto Kagoshima。Vol.5は、絣(久留米絣)です。

biotope(以下・b):京都の「かみ添」さんと唐紙をつくったのがきっかけで、鹿児島さんの図案を日本の伝統工芸で表現するコラボレーションを続けたいと思いました。

鹿児島(以下・鹿):久留米絣は、福岡県の筑後地方の伝統工芸です。

b:絣は、織りの構造が立体的で、2次元のテキスタイルデザインではなく、3次元的な思考が必要な織物なので、誰もができる仕事ではないと思っていました。陶芸家・鹿児島睦が絣のデザインを手がけることはないかもしれないけれど、鹿児島さんは、とても発想が豊かな方なので、図案家として絣の柄をつくれるのではないかと。

鹿:そうだったんですね。

b:はい。図案家・鹿児島睦が手がける図案の可能性を、探ってみたい気持ちがありました。

鹿:それで、織元さんに声をかけてくださったんですね?

b:久留米絣の織元、下川織物さんと知り合ったこともあり、コラボレーションをお願いしました。久留米絣は、200年以上の歴史を持つ九州を代表する伝統の織物です。下川織物は、伝統の技法を守り応用しながら、新しい視点でものづくりをしている織元なんです。

鹿:僕は、下川さんとの打ち合わせに合わせて、ある程度、図案のイメージを膨らませていたんですが、実際の製法を見せていただくと、絣という織物が、とても特徴的なつくり方で生まれているということを実感しました。

b:そうですね。私たちも、その作業工程にびっくりしました。糸の染色の仕方も、織り方も、とてもロジカルというか、数学的な考え方でつくられているんです。改めて素晴らしい工芸品だなあと思いましたね。

絣の糸がたくさん干してある写真

鹿:そうなんです。絣は、縦糸と横糸で織り上げていく織物ですが、柄を出すためには、その柄の入り方に合わせて、糸を染めるところから始めなければならないんです。その染め方にも特徴がありましたね。

b:縦糸、横糸、それぞれ柄を出すために、糸を巻きつけてくくり、染めていくことで、染め分けていくんです。この技法を、括り(くくり)というんでしたよね?

鹿:そうですね。織り進めたときに図案がどうでるかを想像して、色を染め分けていくというのは、すごい技術ですよね。

b:しかも、糸を染める作業は、すべて手作業です。天日干しをするため、天気がよい日を見計らって作業するなど、気を遣うお仕事です。

鹿:織りの工程は、いまでこそ機械が担っていますが、織り進めるうちに糸がずれることもあるので、織り機のそばにはいつもかならず熟練の職人さんがいて、仕上がりに常に気を配っているんです。

b:最後に頼りになるのは、やはり、人の手なんですね。

鹿:200年もの間、人の手で培われた伝統の技術がいまも受け継がれているというのは、とても貴重なことだと思いますね。

糸を織っているシーンの写真

b:それと、絣はテキスタイルですが、図案を表現するには、平面のグラフィックデザインとして考えていては、ダメなんです。

鹿:そう。織りの構造と糸の染め分け配置を理解しないと柄をつくり出せない。

b:そういう意味で、ロジカルな思考が必要な工芸品だなと思いました。鹿児島さんは、最初から、ロジカルにイメージすることができていたような気がするんですが、どうですか?

鹿:そうですね。そのことは、わりと早い段階で、理解できていました。絣の製法に照らし合わせて図案を考えるのは、けっこう頭を使いましたが、とても楽しかったですね。

b:どんなところに、一番、頭を使いましたか?

鹿:例えば、絣糸は、基本的に2色に染めます。その2色の縦糸と横糸を組み合わせることでグレートーンの3色目がうまれます。さらに、糸に染め分けた黒と白によって生まれた縞模様は、もうひとつのグレーに見立てることができます。こうしていくと、黒と白の2色染めでも、その倍の4色の色を表現することができるというわけです。

b:私たちは、最初は、なかなかロジカルに考えることができませんでした……笑。数学的な思考で考えるのには、けっこう時間がかかりました。

鹿:できあがる反物は平面だけれども、織りの構造は3次元のパズルのようですからね。

次回は、どうしてこの図案になったのかを聞かせてください。

話している鹿児島さんの写真