ZUAN&ZOKEI by Makoto Kagoshima

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Q3 色はどのように決めたの?

 

ZUAN & ZOKEIのプロダクトの成り立ちや誕生秘話を、鹿児島睦とともにたどる Talk with Makoto Kagoshima。Vol.6は、LINNUT 壁の鳥です。

鹿:こうして、気骨のある生地屋さんのおかげで、LINNUT 壁の鳥は、なんとか成形することができたのですが、ウサギの花器よりも凹凸のあるこの形は、焼くときに変形してしまうという問題がありました。

b:壁の鳥は、内側が空洞です。それも焼くのが難しい理由のひとつですか?

鹿:外側と内側で土の収縮率が違うので、変形してしまうようなんです。収縮率を統一して変形を防ぐことが必要でした。収縮率を統一するには、ふたつの方法がありました。

b:ひとつは、壁にかける側にあたる、鳥の裏側にも釉薬をかけることでしたね。

鹿:はい。でもこれだと、焼くときに窯に釉薬がついてしまうので高台をつける必要があったんです。壁にかける側とはいっても、鳥の裏側に高台があるのは避けたかったので、もうひとつの方法をとってもらいました。

b:そのもうひとつの方法とは、どんなやり方でしたか?

鹿:裏側に釉薬を塗るかわりに、空洞になっている内側に釉薬を塗るという方法でした。

b:外側と内側に同じように釉薬を塗ることで、収縮率を合わせ変形を防ぐことができたということですね。

鹿:石原さんをはじめ、制作に関わる職人さんが工夫や挑戦をしてくださって、テクニカルな解決法を考え出してくれました。

青色の壁の鳥を持っている写真

b:壁の鳥のように、形が特殊なものになると、職人さんの発想がより頼りになるんですね。今回はとくに、創意工夫をこらして、独自のやり方を考えて出してくれたということですよね。

鹿:石原さんが石膏のモデルをつくり、型屋さんが型をとり、その型を使って生地屋さんが生地をつくる。と聞くと、単純な連携に感じますが、実際の工程はもっともっと複雑です。

b:JÄNIS ウサギの花器、LINNUT 壁の鳥の他にも、biotopeで石原さんにお仕事をお願いする中で、そのことはすこしづつ分かってきたような気がします。

鹿:型のどこに鋳込み口(泥しょうを流し込む)をつけるかによっても、泥しょうの流れ方が異なるようですよ。

鹿児島さんが壁の鳥を持って説明している写真

b:すごいですね。そして、釉薬屋さんにいけば、色の種類も豊富です。LINNUT 壁の鳥は、釉薬のテストを重ねていただき、最初は11色も作ってもらいました。

鹿:黒やさまざまなブルー、ブラウンもありましたね。

b:インスピレーションは、フィンランドのアラビアの色使いでした。その後は、白、ピンク、黄色、ネイビーにしぼって展開しています。黄色やネイビーは、鹿児島さんのハンドメイドの壁の鳥のイメージもありました。ピンクと白は、JÄNIS ウサギの花器と同じ色になっています。

鹿:どの色もとてもいいですよね。鳥の向きも左右両方あります。ハンドメイドでも、左右両方の鳥をつくっていたので、こういう形でプロダクトになって嬉しいです。

次のインタビューは「てぬぐい」についてです。お楽しみに。

4色の壁の鳥の写真

Q2 どんなふうにプロダクトにしていったの?

 

ZUAN & ZOKEIのプロダクトの成り立ちや誕生秘話を、鹿児島睦とともにたどる Talk with Makoto Kagoshima。Vol.6は、LINNUT 壁の鳥です。

biotope(以下・b):LINNUT 壁の鳥のプロダクト化にあたっては、JÄNIS ウサギの花器と同じく、波佐見の原型師・石原重行さんに制作をお願いしました。

鹿児島睦(以下・鹿):石原さんは、素晴らしい技術をもった職人さんで、焼き物の歴史や技法のことはもちろん、古いものや、海外の焼き物にもとても詳しい方です。僕は、石原さんと知り合ってからずいぶん長くて、とても尊敬しています。

b:石原さんは、鹿児島さんの作品をいくつも持っていらっしゃるそうですね。

鹿:そうなんです。とても光栄です。石原さんは、壁の鳥のハンドメイド作品も気に入ってくださってたくさん買ってくださっています。ご自宅の壁にかけてくださっているんです。

b:そんな石原さんに「壁の鳥をプロダクトにしたい」とお願いしました。

鹿:あんまり感情を出さない方なのでお気持ちがどうなのかはわからなかったですけど、お願いしたときは、「あ、これつくると? 可愛いかもんね」みたいにいってくださったと思います。

b:喜んでくださったんですね。

鹿:ウサギの花器のときと同様に、今回も図面を描くということはせず、アナログなやり方でお願いしてしまったのですが、石原さんは、すぐに対応してくださいました。

b:ハンドメイドのLINNUT 壁の鳥の型紙を、石原さんに見せたんですよね。

鹿:そうですね。石原さんが、壁の鳥のことをよく知ってくださっていたので、原型は早めにできあがりました。

波佐見の原型師・石原さんの写真

b:今回は、石膏型で生地を成形する生地屋さんが、とくに大変だったようですね。

鹿:そうなんです。壁の鳥で採用した技法は「圧力鋳込み」といって、石膏型に土を流しこむときに圧力をかけて、くちばしや羽の先まで、泥しょう(生地)が流れ込むようにする技法なんですが、この方法は、泥の重さと型の重さが相まって石膏型がとても重くなってしまうんです。

b:重労働ですね。

鹿:泥しょうを流し込んだあと、表面だけが固まったタイミングで、重い石膏型をひっくり返して、余分な泥(生地)を外に出さなければいけない。大変な作業です。それだけではありません。今回は、凹凸がある形なので、表面張力で泥が出てきにくい箇所もあったそうです。

b:泥がうまく出てこないと、どうなってしまうんですか?

鹿:泥を出すのに時間がかかると、固まってしまい全体が重くなります。さらに、泥の厚いところと薄いところというように、生地が均一でなくなってしまうこともあります。

b:均一でないと、どういう問題がおきますか?

鹿:焼くときに割れてしまう恐れがあります。厚いところは焼くのに時間かかり、冷めるのも遅い。薄いところは、すぐ焼けてすぐ冷める。その違いが割れにつながるんです。

b:なるほど。ひと口に焼き物といっても、形の違いによって気を配る箇所は、それぞれなんですね。

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鹿:波佐見は、磁器の産地でたくさん生地屋さんがありますが、壁の鳥は、このように工程に工夫が必要で大変なので、最初はどこも引き受けてくれなかったと、石原さんがおっしゃっていました。石原さんは、原型師さんですが、下請けの業者さんに掛け合って、ひとつのプロダクトを商品化するための道筋をコーディネートすることもしてくださいます。

b:そんな中、一軒だけやってくれるという生地屋さんが見つかったんですよね。

鹿:はい。石原さんの紹介で、村松さんという生地屋さんが手をあげてくれました。

b:実際に制作している現場に、一緒に伺いましたよね。

鹿:そうでしたね。そこでわかったことは、石膏型から、泥を出す工程がとても難しいということです。しかし、その生地屋さんの二代目にあたる若い男性が、石膏型にゴムのチューブを差し込んで息を吹きかけることで、泥をぬくというやり方を思いついてくださったおかげで、均一な生地を作ることができたんです。これは、めずらしい技術ではないと思いますが、重たい石膏型を手でもって、ひとつひとつ泥をぬくというのは、ほんとうに重労働で大変な作業。それでも、引き受けてくれました。

b:生地屋さんは、まさに職人。LINNUTのために創意工夫をしてくださったことに大変感動しました。

鹿:はい。そういう尊い仕事をしている職人さんたちのおかげで、LINNUT 壁の鳥ができていると思うと、ほんとうにありがたいです。

次回は、釉薬や色の話を聞きます。

壁の鳥の手書きイラストの写真

Q1 壁の鳥をプロダクトにしたきっかけは?

 

ZUAN & ZOKEIのプロダクトの成り立ちや誕生秘話を、鹿児島睦とともにたどる Talk with Makoto Kagoshima。Vol.6は、LINNUT 壁の鳥です。

biotope(以下・b):ZUAN&ZOKEIのプロダクト、LINNUT(壁の鳥)は、鹿児島さんがハンドメイドの作品として作っていた壁の鳥をもとにして生まれたものです。

鹿児島睦(以下・鹿):ハンドメイドの壁の鳥は、好きだといってくださる方が多くて、ギャラリーの方からも、作ってほしいというリクエストが多いアイテムでもありました。

b:2008年のbiotopeの最初の個展のときにも、壁の鳥はありましたよね。

鹿:そうですね。ずいぶん前からつくっていますね。でも、これは、つくるのがけっこう大変で。JÄNIS ウサギの花器と同様に、ひとつひとつ手で制作しています。つくりはじめたら、他の作業はできないので、10羽くらいを目安に一気に仕上げていくんです。

b:最近は、個展でもこういったオブジェは、あまりつくられていないですか?

鹿:そうですね。お皿をリクエストしてくださるギャラリーやお店が多いというのもありますし、オブジェは、制作にどうしても時間がかかるので、お皿を優先しているのかもしれません。

焼く前と焼いた後の壁の鳥の写真

b:鹿児島さんご自身は、オブジェは好きですか?

鹿:とても好きですね。時間があったら、ほんとうは、いろいろとつくりたいという気持ちが強いです。

b:そうなんですね。

鹿:僕は、もともとインテリア業界で仕事をしていたんです。だから、お皿だけではなくて、インテリアになるものもつくっていきたいという想いがあります。

b:鹿児島さんには、学芸大学のbiotopeのころから個展をしていただいていますが、作品をテーブルの上に展示するだけでなく、壁まで使って、鹿児島さん自らが空間を構成していくというのが新鮮でした。

鹿:陶芸というと、お皿やボウル、カップなど、食卓で使うものを想像する方のほうが多いかもしれませんね。

b:鹿児島さんは、当時から、壁にかける花器やオブジェをたくさんつくっていましたね。

鹿:そうですね。展示をするなら、空間全体を構成したいというか、そのほうが素敵だと思っていたんだと思います。

オブジェの原型の写真

b:ハンドメイドの壁の鳥は、どういう発想から生まれたんですか?

鹿:最初に壁の鳥をつくったのは、もう10年以上前だと思います。

b:どんな作品でしたか?

鹿:そのときは、すべて白でつくりました。立体的で形のあるものを壁にかけると、そのもの自体に色がなくとも、影ができて、それだけでも美しい。そういうのが好きだったんです。

b:その発想は、インテリア出身の鹿児島さんならではかもしれませんね。

鹿:そうかもしれません。空間を飾る陶芸作品も必要だと思っていたので、壁掛けのオブジェをつくりはじめたんだと思います。

b:ハンドメイドのアイテムを、プロダクトにすることに抵抗はなかったですか?

鹿:壁の鳥に関しては、むしろこういう形こそ、プロダクトとしてつくったら可愛く仕上がるのではないかと思っていました。

b:ZUAN&ZOKEIのプロダクトとして提案する前から、そう思っていたのですか?

鹿:そうですね。前からそう思っていたので提案をいただいたときは嬉しかったですよ。

次回は、どのように製品化していったのか、そのプロセスを教えてください。

鹿児島さんが壁の鳥について説明している写真